最近の雁木とその派生戦法 (1) 基本編~現在編 の続編です。
雁木も指せるとなると、俄然有力になってくる戦法、それはモノレール向飛車です。モノレール向飛車は佐藤康光先生が
2005-09-16 第53期王座戦 ▲羽生善治△佐藤康光 で指した面白い戦法で、一手損シフト(後述)から第1図のように飛車先逆襲を狙う戦法です。第1図のような形にできれば後手にまったく不満がありませんね。勝てると非常に痛快な戦法です。
モノレール向飛車とは
モノレール向飛車ができる条件はかなり限定的なのですが、一手損角換わりで先手が▲25歩を決めなかった場合に、後手が△44歩と角道を止めた形(第2図:一手損シフト)で成立します。最近のプロ間では▲25歩を決める事が多く成立しにくい形ですが、▲25歩を決めると阪田流向飛車などの変化が生じるため、アマ間では▲78金とする人も結構います。
一手損シフトに対しては▲25歩と突いて△33角を強要し、矢倉を牽制するのが常套手段ですが、対して△33角と上がらずに△42銀!が面白い手です。先手は当然▲24歩と仕掛ける一手となりますが、以下△同歩▲同飛△33銀(第3図:△43銀もありますが説明上)に▲28飛と引くと、以下後手は△35歩~△34銀~△43飛~△25歩~△23飛と2、3筋に厚みを築いて第1図にできるという恐ろしい戦法です。
モノレール向飛車の現在
モノレール向飛車は最近プロ間で一手損シフト型が減少(消滅?)した事から、登場する可能性がほとんどない絶滅危惧種戦法になっています。一応実戦例としては
2008-10-17 第66期順位戦 ▲島朗△豊川孝弘 があり、この対局は△34銀の瞬間に▲36歩を突いて後手の好形を阻止するという対策を採りました。これも有力な対策である事には間違いないのですが、後手も指せそうで決定版という感じはないです。
このように公式戦上はあまり深く語られていないモノレール向飛車なのですが、
2006年7月号の「将棋世界誌」の「徹底解剖!佐藤新手の謎」 という特集があり、第3図で▲25飛!とすると後手は△23歩と打つよりなく駄目そうと書かれているようです。事実これがモノレール向飛車が登場しない一番の理由でしょう。
モノレール向飛車を防がれれば雁木へ
私もこの特集の存在を知ってモノレール向飛車は消えた戦法と思っていたのですが、雁木が有力という事がわかってから、モノレール向飛車もいけるかもと思うようになりました。第3図で△33銀ではなく△43銀(第4図)とすれば良いのです。対して▲28飛には△35歩からモノレール飛車を狙います。
特集では第4図についても紹介があり、▲36歩とすればモノレール向飛車にはできないと説明されています。結局、後手は雁木にする事になるのですが、昔の私はここで「雁木にするんじゃ不満だな…」と思っていました。しかし今ではいける!と思えます。
第4図から雁木にする場合、
前回も少し書きましたが既にメリットがあります。(1)早い段階で2筋の歩交換をさせた事で▲26角型・▲37角型の変化を防いでいる、(2)そのため▲57銀・▲67金型か、1筋端攻め型になる事が多そうだが、どちらの変化になっても後手も十分戦えそうという点です。
これらの特徴は前回の記事でいくつか取り上げた加藤一二三先生の駒組みでも言える事ではあるのですが、(3)場合によっては飛車先不突を生かせる、(4)モノレール向飛車に変化できる余地がある、(5)早い▲36歩を強要した事で△73角がより効果的になる、というメリットがさらにあります。以上の事から、モノレール向飛車も消えた戦法とは言えない気がしてきました。
今回は細かい変化を省いてサクッと紹介しましたが、モノレール向飛車は結構いけるんじゃないかと思っています。突き詰めていくと様々な変化があって簡単ではないんですが、どうやら後手も指せそうです。既にモノレール向飛車を知っていた人も、知らなかった人も是非実戦で試して頂きたいのですが、今回書いた記事だけでは「モノレール向飛車が面白そうとは言っても、あくまで一手損シフトになった場合の変化球だよね?」という状態には違いありません。
そこで(1)▲25歩を決められた通常の一手損角換わりになった場合でも無理矢理にモノレール向飛車にする方法はないか、(2)一手損角換わりでも面白い戦法はないか、という点についてさらに紹介していきたいと思います。(2)については
定跡裏街道~角交換振り飛車編~でも魔界三間飛車という戦法を一つ紹介しているのですが、他にもたくさんの面白い戦法があります。
1. 定跡裏街道とパスワード
PDFを開くたびにパスワードを要求されて不快です。
印刷やスクリーンショットなど、個人で対策はできますが、
正直なところ金を出してなぜこんな不便な思いをというものがあります。
次に出版する際に考慮して頂ければ幸いです。
なお、いまの形式のまま電子書籍を出版されてもまた買います。それだけの価値はあります。
良い本をありがとうございます。