初めて赤旗名人戦に参加したのですが、神奈川県本戦では初戦から超強豪に当たって、華麗に負かされてしまいました。もっと実力を付けないと、と感じさせられる大会でした。精進します!
さて、
裏立石 (1) 一手損角換わりから無理矢理に立石流四間飛車 の続編です。
前回紹介した裏立石ですが、前回取り上げた第5図(初手から▲2六歩△3四歩▲7六歩△3二金▲2五歩△4四歩▲2四歩△同歩▲同飛△4五歩!の局面)から考えていきたいと思います。前回は第5図からの急戦として、①▲34飛、②▲22角成、③▲5八金右、④▲6八玉について考えましたが、いずれも後手も十分指せる分かれになりました。
そこで今回は⑤▲28飛からの持久戦について考えてみたいと思います。第5図のような不思議な駒組みをする利点も、その過程で紹介します。
第5図以下の指し手⑤▲2八飛
▲2八飛には△4二飛(第19図)として立石流四間飛車を目指します。△2三歩と受けて通常の立石流にしてしまっても良いのですが、受けたくなるところをあえて受けないのがポイントです。以下▲6八玉△6二玉▲4八銀△7二玉▲7八玉△8二玉▲5八金右△7二銀▲9六歩△9四歩(第20図)と、2筋を受けずにさらに駒組みを進めます。
4筋の歩交換を見せて先手陣に制約をかける
まずは第20図まで進めてみた際に、通常の立石流四間飛車と異なる点に気が付いたでしょうか。2筋を受けていないのは当然違う箇所ですが、もう一つ大きな違いとして、後手がいつでも△4六歩から4筋の歩交換ができるようになっているのです。通常の立石流四間飛車では、先手が舟囲いから急戦にする場合(第21図)などを除けば、4筋で手を作られるのが面倒なのでまず間違いなく後手の4筋の歩交換を防ぎます(第22図)。
しかし裏立石では第5図の段階で後手が4筋の歩交換をする権利があります。先手が第22図のような持久戦を狙ってくれば、4筋の歩交換をする事で先手の陣形を大きく乱すことができます。つまり4筋の歩交換を常に見せる事で、先手陣に制約をかけているのです。どうでしょう、なかなか面白い戦法に思えてきませんか?
2筋を受けずにポイントを稼ぐ
ところでなぜ2筋を受けないかですが、これは先手が▲2四歩と攻めて来た瞬間に△8八角成▲同玉△2二歩(第23図)としたいからです。
第19図で△4二飛に代えて△2三歩と受けてしまうと(瞬間的に)飛車先を無条件で切られた格好になってしまいますが、第23図は先手に歩を打たせて不満がない事がわかると思います。後手は先手が▲2四歩と打つまでは2筋は受ける必要がないのです。
後手が△2三歩と受ける必要があるのは、第24図のように先手が角道を止めて来た場合です。この場合は▲2四歩に△8八角成の筋が消えたため、さすがに△2三歩と打つよりないです。△2三歩と打つのは癪ですが、それ以上に先手に角道を止めさせた事が大きいです。
第23図と第24図はどちらも遭遇頻度の高い形ですが、今回は△2三歩を打たない理由の紹介として、第23図以降の指し方を詳しく紹介します。
第23図以下の指し手
▲7八銀△3五歩▲5六歩△4四飛▲6六歩(第25図)
第23図以下は通常の立石流と同じように駒組みします。先手は様々な囲い方が考えられますが、最も手堅い駒組みは本譜の左美濃でしょう。後手は△4六歩と仕掛ける手も考えられるのですが、▲5八金右・▲4八銀の二枚で守っているところを攻めるのはあまり効果がありません。4筋の歩交換は、第26図のように先手の守り駒が少なく▲5六歩や▲3六歩などの離れ駒がある時にするのが良いでしょう。ここでは△4四飛と浮き飛車にするのが良いです。
迎えた第25図。一見何もなさそうな局面ですが、ここで後手に渾身の一手があります。
△3三角!(第27図)
角を手放してしまうため少し抵抗があるかも知れませんが、これで後手十分です。後手は飛車の打ち込みに強く、飛車交換をすればどうにでもなる形なのです。一方先手は飛車交換を防ぐ手がありません。この仕掛けは実は第23図の段階から防ぎにくく、先手にあえて▲2四歩を打たせる理由にもなっています。高度なハメ手のような手順なので私も実戦でこの変化になった事はあまり多くないのですが、この順が決まった時は結構嬉しくなります(笑)。
今回紹介した裏立石は、結構激しい変化になる可能性もあるので少し敷居の高い戦法でしたが、次の記事ではもっと手軽に利用できる新戦法を紹介します。